トンネル掘削シールドマシン用
非常灯の製作事例
道路トンネルの非常用施設とは?
皆さんが自家用車を利用して郊外へ旅行する時に通るトンネルの内部には、大規模災害を防止するために様々な非常用施設が設置されています。これは、国土交通省の「道路トンネル非常用施設設置基準」によって規定・分類され、主な設備は下記の通りとなります。
通報設備—–押ボタン式通報装置 、非常電話機、非常電話案内板など
警報設備—–非常警報設備など
消火設備—–消火器、消火栓設備など
避難誘導設備—–誘導表示設備、避難通路、排煙設備など
その他の設備—–給水栓設備、無線通信補助設備、監視設備など
先日のブログで説明した非常灯は主に建物(建築物)に適用されるものですが、トンネルなどにも二次災害を防止するための避難誘導設備として設置が義務付けられています。
トンネルを掘るシールドマシンとは?
しかしながら、今回の製作事例は「トンネルを作る、掘る」時に使用された非常灯になります。トンネル工事の概要を簡単に説明すると、トンネルを掘り進めるには「シールドマシン」という巨大なモグラのような機械を使います。(下記イラスト参照)
シールドマシンの先端に取り付けた歯を回転させながら、高圧をかけた泥水で崩れないように抑えられた土を削り取ります。削り取った土は送り込んだ泥水と一緒にパイプでトンネルの外の処理設備まで運び、それを繰り返すことで掘り進んでいくわけです。つまり、シールドマシンの内部では湿気とホコリが充満しており、非常に過酷な環境であるということは間違いありません。通常であれば、湿気やホコリで満たされた空間に長時間滞在するような体験をすることは稀です。敢えて言えば、火災などで煙が充満している中を避難しているイメージでしょうか。
トンネル用非常灯の製造事例
そのような過酷環境で必要とされるのが、防塵・防水構造を兼ね備えた非常灯となり、今回はその製作事例の一つを紹介します。場所は秘密保持のため明かせませんが、高速道路用地下トンネル(工期約4年)での案件になります。下記の写真は設置から約6ヶ月のもので、シールドマシン左側上部に当社製非常灯2本(手前と後方)が取り付けられています。ちなみに真ん中は通常の防水照明器具(他社製)になりますが、工事現場ではすべての照明を非常灯にしなければいけないわけではなく、通常照明の一定割合で非常灯1本を設置すれば十分で、あくまでも非常時の備えという考え方によります。
(設置後約6か月)
設置後約1年経過した非常灯の様子
この現場は、担当者の厚意により定期的に現場に入ることを許されました。工事現場で何より優先されるのは「安全第一」であり、事故発生リスクを軽減するため関係者以外の入場は出来るだけ避けたいところです。ですが、災害を未然に防止する防災、減少させる減災の見地より定期的なメンテナンスが認められ、心より工事責任者に感謝いたします。なお、下の写真は設置から1年程度が経過した様子です。上の写真と比較すると非常灯の上部や周辺にホコリが積もっているのが分かるでしょう。決して現場が5Sを怠っているわけではありませんので、担当者に代わって弁明いたします。また、真ん中の通常照明は過酷環境下で故障したようです。
(設置後約1年)
設置後約2年経過した非常灯の様子
下の写真は設置から約2年後のもの。上記写真とほぼ変わらないのが不思議ですが、よく目を凝らして見ると非常灯の上部に積もったホコリが、年月の経過とシールドマシンの過酷さを物語っています。
(設置後約2年)
分かりやすいように、約2年経過した非常灯(上記写真)を別角度で撮影したものが下記の写真となります。
(設置後約2年_拡大)
一体どれだけの湿気とホコリがあれば、こんなに汚くなるのか・・・。ですが、こんな環境下でも相も変わらず光り続けている非常灯にはある意味安心感を覚えます。ちなみに、この現場にて私が行ったメンテナンスは電源喪失時での点灯テストに限定し、分解・清掃は行っていません。なぜなら、毎回のメンテナンスで器具表面に付着しているホコリを除去してしまっては、この非常灯が本当にIP64の防塵・防水機能を持っているのか分からないためです。その意味では、この現場の担当者には本当にお世話になりました。今どこで何をしているのでしょうか・・・。
ちなみに、この非常灯は国土交通省によって運営されているNETIS(新技術情報提供システム)に登録されています。NETISを簡単に説明すると、「メーカーは優れた技術があれば登録してください。建設会社はその登録技術を使って入札してください。入札の査定点数を加算して有利にしてあげますよ」というシステムです。なお、登録までの手続きはとても複雑で難解です。
(NETIS登録番号:KT-110024-VE)